電力使用量NOW

2010年7月8日木曜日

プラズマ再考 第3回

さて、前回はプラズマクラスターが放電によるもので、空気中の窒素、酸素、水分をプラズマによって電離させ、イオン粒子を発生させていると思われるというところまで書いた。

しかし、一口に「放電」といっても形態は様々で、代表的なものを挙げると「グロー放電」「アーク放電」「コロナ放電」「火花放電」が挙げられる。同じような「放電」という名前が付いているが、放電形態はまるで異なる。しかしながら、空気の絶縁破壊を引き起こすような膨大なエネルギーの固まりであることは共通しているので、どの放電でもプラズマは発生しうる。


放電形態いろいろ。
左上から「グロー放電」「アーク放電」左下に行って「コロナ放電」「火花放電」
グロー放電は半導体産業などで用いられる一般的な放電プラズマ、
アーク放電はアーク溶接などに応用される。
どちらもプラズマの持つ局所的エネルギーを利用したものである。
コロナ放電は電界が均一ではない場合に発生し、火花放電はそれら放電の断続的な形態である。

というわけで、当のシャープのホームページを今一度眺めてみることにしよう。

自然界にあるのと同じ+(プラス)と-(マイナス)のイオンをプラズマ放電により作り出し放出。浮遊ウイルスを抑制し、浮遊カビ菌/アレル物質/付着したニオイを分解・除去するシャープ独自の空中除菌技術が「プラズマクラスター」技術です。

「何」をイオン化しているのかが書いてないなぁ。そして「放出」と書いてあるが、通常気体中でのイオンの寿命は短い。イオン化した粒子は電気的に中性でないため不安定で、なるべく早く他の粒子と結合したがる。上記文章には陽イオンと陰イオンが同時に放出されるような印象を受けるが、そんなことをしたら一瞬にして双方が引き合い、元の分子を作ってしまうだろう。

考えるに…プラズマクラスターで重要なのは陽イオンよりも陰イオンで、もっと突き詰めれば「酸素を含む陰イオン」であろう。前回も書いたが、酸素は放電などによってイオン化すると活性化し、非常に不安定になる。なるべく他のシロモノとくっつきたがるのである。そこへ「浮遊カビ菌」「アレル物質」「付着したニオイ」などの有機物が近づいてくると、それらを酸化させ不活性化する…ということであろう。その辺りはこのサイト(株式会社サーマル)が詳しい。図ではオゾンと書いてあるが、水分と結合して水酸化物イオンを生成する反応は活性酸素と呼ばれるジャンルの粒子ならば共通であろう。

じゃあ、陽イオンは何のために生成されるの?
恐らく…ただの副生成物ではないだろうか?

次に、このような但し書きが書いてある。

当技術マークの数字は、高濃度プラズマクラスターイオン発生ユニット搭載のプラズマクラスターイオン発生機を壁際に置いて、風量最大運転時に適用床面積の部屋の中央付近(床上から高さ1.2m)の地点で測定した空中に吹き出される1cm3当たりのイオン個数の目安です。

え?何のこと?と思って「技術マークの数字」を見ると…「25000」と書いてある。この数字は信憑性があるのだろうか?

仮に酸素と窒素、水分が空気中に含まれていて、その空気を1立方センチメートルかき集めたときに含まれる気体の量を考えてみる。

飽和水蒸気量といわれる法則があり、気温によって空気中に含有出来る水の量が決まっている。夏は温度が高く、多量の水分を含むことができ、冬はその逆である。温度の上下によって「結露」という現象が起きる。冬の窓の家内部側に多量の水が付着するのは、この飽和水蒸気量が深く関係している。

飽和蒸気圧曲線。
温度が高ければ高いほど、空気は多くの水分を含むことができる。
中学校の科学で習う、初歩的な法則である。
出典:Wikipediaより

室温を20℃と仮定し、湿度を50%とすると、この空気1立方メートル辺りの水の量は8.6[g]である。1[cm3]の空気では

8.6 x 0.000001[cm3] = 8.6 x 10E-6[g]

水分子の質量数が18であるから、おおよそ0.48 x 10E-6[mol]である。1molの分子数はアボガドロ数より6.02 x 10E23[個]と決まっているから、この場合、

(0.48 x 10E-6) x (6.02 x 10E23) = 2.88 x 10E17 [個]

通常の実験室レベルで得られる「弱電離プラズマ」の電離度(気体が電離する確率:リンク参照)は1/10000以下である。ただし、この場合は気体圧力、温度、電界密度など、様々な要素が異なってくるが、この際面倒だから電離度を1/10000としてしまうと…。

(2.88 x 10E17) x (1/10000) x 2 = 5.76 x 10E13[個]

2をかけてあるのは、H2Oの電離によってイオンが2つへ分かれるためである。

それにしても25000と比較するととっても少ないなぁ。放出過程でほとんどが結合して水分子へと戻っているからだろうか?まあ、少ない分には問題ないわけだ。電界密度を減らしてやれば、当然電離する確率は減少するわけだし、前述の通り放出されたらあっというまに逆の極性のイオンと結合しちゃうんだから。

ただ、活性酸素を放出するとしたら、人体にとってあまりよろしくないんじゃないか?とも思えてくる。その辺はどうなのだろう?それを考慮しての25000という数字なのだろうか?

基準が分からないから何とも言えん。

ちなみに、電離度が大きくなると、気体分子のほぼ全てが電離し「完全電離プラズマ」となる。身近な完全電離プラズマは「太陽」で、絶え間なくプラズマ核融合を起こしている。人類でプラズマ核融合を長時間達成した例は報告されていないが、トカマク型核融合炉である「ITER(イーター)」が実験炉として世界規模で開発・研究が進行している。

今日は以上。

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