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2010年8月1日日曜日

X Japan 続き〜そしてドラムとは?

先日の「X Japan」。
いろいろ思うところがあるので、ついでに書いてしまおう。

まず、Yoshiki。
この人はなかなかディープな人で、本も出ているので興味を持たれた方は読んでみるといいと思う。

http://www.amazon.co.jp/X%E2%80%90JAPAN%E4%BC%9D%E8%AA%AC-PROJECT%E3%80%8CX%E3%80%8D/dp/4846301133/ref=sr_1_21?ie=UTF8&s=books&qid=1280587463&sr=1-21

彼は、要するに「ママから寵愛されて育った」人。
欲しいものは全て買ってもらったし、「Extasy Records」というインディーズレーベルも、Yoshikiの母親が出資して設立されたレーベルである。

まあ、それはどうでもいいとして、論点はこの人の演奏に関する力量である。

彼のドラムは一言で言えば「力業」であろう。
打楽器奏者として「脱力をする」というのは基本中の基本。振り下ろしたスティックの振り上げを、打面の跳ね返りを利用するという動作は、脱力を基本にして成り立つ一連の動作である。

しかし、彼はそうではない。

演奏中の映像を見ると、スティックを握り込むようにして持ち、振り下ろし振り上げともに筋肉の動きだけで行っている。

「DAHLIA」演奏シーン。
激しく首を振り、スティックを力任せに振り、故障するYoshiki。


しかも、彼のトレードマークである「アクリル製ドラム」は、一般には木胴に比べて「鳴らない」と言われている。しかも、レコーディングではこのアクリルドラムは使用されず、チタン胴や木胴などが使用されているらしい。

演奏中のYoshiki。
小指までスティックを握りしめ、
力任せに振り下ろす様子がよく分かる。

ここまでで分かること。
Yoshikiは「エンターテイナー」なのであろう。

彼が演奏中に倒れること。
彼がコルセットを巻いた姿で現れること。
わざわざ鳴りにくいアクリルのドラムでライヴを行うこと。

これらは全て「エンターテイナー」としての彼の姿である。
そのおかげでライヴが盛り上がり、「X Japan」というバンドの伝説がさらに高名になっていくことは素晴らしいことであるし、とても真似出来ることではない。

しかし、あまりにもその姿が先行して、打楽器やドラムに対し「ドラム=力業」的なイメージを植え付けてしまったことは、大きな功罪であろう。事実、自分も長年そのように考えていたし、そのせいで間違いなく成長が遅れた…ことは後悔の種である。

スピードだけで言えば、世の中に「速い」ドラマーはたくさんいる。
以下の動画を見ていただきたい。

苦悶の表情を浮かべるでもなく、まるでうちわでも扇ぐかのように超絶スピードでドラムを叩く、ジョージ・コリアス


よく見ると、スティックを全く握り込まず、手首とスティックの跳ね返りをよく生かした叩き方をしているのが分かる。

お次は、みんな大好きジョジョ・メイヤー
速く叩くのに力なんて全く必要としないのがよく分かると思う。


これ、全部生ドラムで演奏してるなんて信じられない。
完全にループを組んでいるようなドラムンベース。
左手のスネア、どうやっているのか全然分からない。


最後にジャズ界のレジェンド、バディ・リッチの超絶シングルストローク。
真似どころか、とてもじゃないが近寄ることすらできない。
演奏に「おちゃめ」さを織り交ぜるところも彼の魅力。


ちなみにこの演奏は1978年。バディ・リッチは1917年生まれで1987年に亡くなっている。齢61歳にしてこの雷のような凄まじいドラミング、信じられますか?

自分もかつてYoshikiが唯一無二な存在である時期があった。
でも、世界に目を向けると、Yoshikiよりもすごい世界があった。

ただ、Yoshikiが下手なんて口が裂けても言えない。
何故なら、音楽とは芸術でもありエンターテイメントでもあるからだ。
彼のスタイルが賛否両論こそあれども、ヴィジュアル系という一つの時代を築いたということは紛れもない事実だし、彼の作る曲にはコード進行的なイヤミがない。これも彼のベースである「クラシック」の成せる技だと思う。そのクラシックの流れに従い、凄みがありながらも音楽に逆らわない、まるで「そうでなくてはならなかった」かの如く流れるようなドラミングは、彼にしかできない一種の「様式美」であり、もはや「X」というジャンルである。

ただ、世界は広い。いろんな人がいるものだなぁ、ということだ。

以上。

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