FT-IRのアライメント等について、一通りの調整が終わった。
自分の研究室はBOMEM社のMB100という装置を使っている。カナダの企業なので、説明書もすべて英語。今回ほど英語が使えることを便利に思ったことはない。
大事なのが液体窒素による冷却。これがないとプリアンプの熱雑音が増幅されて出てしまう。それに加え、レーザー発振器の窒素パージ。窒素は工業用のボンベに入ったものを使う。レギュレータからチューブを伝って、フローメータで微調整をしつつ、3L/minで2〜3時間窒素を流し続ければだいたいOKだと思われる。気を付けなければいけないのが、入っていった窒素は放出しなければならないこと。裏面に六角レンチで回すボルトがあり、これを解放して流し続ける。しばらく流し続ければ機器の内部が隅々まで窒素パージされる。おもむろにボルトを締め、少々待つ。すると、機器内部の圧力が大気圧より高い状態になる。そして窒素のボンベを閉じる。内部圧力が高いと、外気が内部に入りにくくなるため、水分や二酸化炭素などの不純物が機器内に混入しづらくなる。
赤外レーザのため、レーザそのものは目で見ることができない。そのため、厳密に機器の水平を取り、検出部とレーザ発振部の高さを合わせる必要があった。単純な作業のため、方法は省略する。
検出部の格納容器内も窒素でパージできるようになっている。しかし、実際に窒素を流しながらアライメントを取ったときと、流さないで取ったときとでは大きな違いは見られなかった。そのため、特に格納容器のパージは不要と思われる。ただし、湿度の高い日や時期では、無用の外乱を絶つために流した方がいいのかもしれない。念のため、格納容器内部にシリカゲルを3袋程度入れておいた。
機器本体には、乾燥剤を格納する容器が隠されている。湿度インジケータがネジ状になっており、これを取り外すと内部に乾燥剤を格納する容器がある。念のため乾燥剤を交換しておいた。…といっても、バラして電子レンジで再利用だが。シリカゲルは電子レンジで復活するらしい。
以上の厳密な調整を経て、アライメントが復活した。しかし、レーザ出力が強すぎてオーバーフローを起こしてしまう。まず、プリアンプの感度を下げてみる。感度調整はプリアンプ本体(格納容器内部)にA〜Eまでのツマミがあり、それぞれが1〜5倍の受信感度になっている。今まではBになっていたが、今回Aに戻した。説明書には「通常Aで使用してください」と書いてあったが、かつてBにした理由は、恐らく真空チャンバ内のシリコン基板に堆積した膜をリアルタイムで測定するため、光路長が増大し、また臭化タリウムガラスを通るために、絶対的な光量が低下したことによる措置だろう。
ツマミでBからAに調整するも、未だにオーバーフローを起こす。そこで、光量を若干減らすために「網」を使う。これを使うことで、アライメント79%まで低下した。説明書には「アライメント60%〜80%の間で測定すること」とあるので、ほぼ理想通りの光学系を構築することができた。
今後の課題として、今まではピンセットで試料を挟み、検出部の一部分で試料を挟み込んで測定していたが、このやり方では効率が悪い。何より、試料に傷がついてしまう。これをどうにかうまくできないものか?
明日の作業予定
・DMA転送によるフレームグラバボードの画像処理プログラミング
・FT-IRのデータ編集ソフトの日本語化パッチ作成
・デジタルオシロの波形取得プログラム
・実験室の片付け
以上。
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