電力使用量NOW

2011年4月21日木曜日

真空装置内の絶縁材料

私の研究室では、高真空装置によって材料を開発する研究を行っている。材料開発に「熱」というものは切っても切れない大事なパートナーで、熱をかけることにより物性の改善をはじめとして様々な利点をもたらすことができる。

真空で材料を開発するには、非常に多岐にわたる手法が確立している。自分たちが用いている方法は「化学気相蒸着」と呼ばれる手法で、原料となる物質を真空容器に導入し、電圧をかけることによりプラズマを発生させ、プラズマの力で原料を分解し、目的の材料を「積もらせる」のである。

この「積もらせる」過程で熱を加えることによって不要なものを除去したり、また分解をより促進したりすることができる。

この度、熱をかける回路を作成し、真空容器に設置することとなった。そのためには、真空容器内に配線をしなければならない。

言葉で書けば単純であるが、真空という環境で、しかも高電圧のプラズマにさらされ、加えて熱をかけられるわけである。配線材料にも、それ相応の耐環境性が要求される。
例えば、回路というものは「入力」と「出力」の2本の線が必要である。すなわち、この2本の線が短絡しないように絶縁してやる必要がある。つまり、まず第一に絶縁性能が必要とされる。

次に、その材料から変な物質が漏洩しないよう、できるだけ化学的に安定な物質でなければならない。プラズマで絶縁材料そのものが分解され、目的とする材料に混入しては問題だからだ。

最後に、真空下でバラバラにならないようなしっかりした材料でなければならない。真空ポンプに入り込み、無駄なトラブルの原因となってしまっては、原因究明に多大な時間を取られてしまうからである。

この3つの特性を生かすには…「ガラスクロス」しか思い付かなかった。ガラスクロスとは、ガラスを非常に細かい繊維状にしたものを布のように編み込んだもので、耐熱性と絶縁性を持っている。

しかし…真空下において放電したときに、何か余分なものが出てくるのでは?という懸念があった。そこで、実際に放電を発生させて、容器内にガラスクロスがある場合ない場合で比較してみた。

ガラスクロスありの場合

ガラスクロスあり、かつ1時間加熱した場合

ガラスクロスあり、かつ10時間真空を引き続けた場合

ガラスクロスなしの場合

このグラフは、縦軸が発光強度(どれだけ明るいか)、横軸が波長(色)を表している。すべてのグラフを見比べると、大した違いが見られないので、ガラスクロスを真空中に入れて放電を行っても、大きな違いは無いと考えられる。

今日は、タングステン線を使ってヒーター本体の製作に入る。

以上。

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