Back in Black(Amazon)
演奏:AC/DC
「Back in Black」、世界で2番目に売れたアルバム。その割には日本での知名度、人気はイマイチという印象。世界一売れたアルバムはもちろん、Michael Jacksonの「Thriller」である。
この「AC/DC」というバンド、自分自身もよく聴く所謂「クラシック」と呼ばれるジャンルとはほぼ正反対に位置する音楽なのではないか、と思う。曲調は極めてワンパターン、コード進行もワンパターン(実際にギターで弾いてみるとよく理解できる)、テクニック的にもスンゲー速弾きがあるわけでなく、ドラムも一聴すると「初心者でもできるかも…」と思わせるほど単純なパターン。男臭い歌詞は卑猥で、アルコールと女、ロックのことばっかり。
しかし…違うのですよ。全てが。よく「単純なことほど難しい」って言うけれど、もはやそんな次元じゃなくて、いや、そんなことはどうでも良くて、とにかくカッコイイ。この人たちの音楽をカッコワルイと考える自称ロックファン(生理的に受け付けないって一般人はたくさんいるかも知れないが)は今すぐ裸足で逃げ出した方がいいと思う。恥ずかしすぎるから。
私が初めてAC/DCを目にしたのは1995年、当時発売されたばかりのアルバム「Ballbreaker」の中の一曲「Cover You in Oil」のPVをMTVで見たのが最初でした。全てが偶然でした。なけなしのおこずかいを放り出してアルバムを買いました。でも、当時はV系バンド全盛期。Luna Sea、X Japan、GLAY、ラルク(後者2バンドは「V系」って言うとファンに怒られるが)など…。私も聴いてはいて、バンドでコピーもしたが…誰もAC/DCなど見向きもしなかった。
衝撃を受けた「Cover You in Oil」のPV。今見るとエロいPVですなぁ。
ロック界の同業者にもファンが多く、ローリングストーンズのキース・リチャーズ、エアロスミスのスティーブン・タイラー、元ガンズのスラッシュ、日本では山下達郎、奥田民生などなど。
音楽的な解釈。
まずアンサンブル力が鉄壁。特にリズム隊。フィル・ラッドのドラムはとにかく重い。しかしドラム・シンバル自体のチューニングが高め(セットはSonor、シンバルはPaiste2002)であるからか、決して沈み込むような重さではなく、心地よい「後ノリ気味」と言ったところ。クリフ・ウィリアムズのベースは主張しすぎず、しかしながら時にはルートを外れてオンコードになってみたり、何より経過音の選び方、タイミングが素晴らしい!そして極めつけは「ミスター・リズムギター」ことマルコム・ヤング。リードのアンガス曰く「俺よりずっとギターが上手い」そうだ。この3人の鉄壁のアンサンブルの上にブライアン・ジョンソンの金切りヴォーカル、一見自由奔放とも思えるアンガスの引き裂くようなマーシャル直サウンドが絡むわけだ。
このバンドはとにかく出音がいい。アンガスのSG + マーシャルのそれは、まさに正統派ロックサウンドそのものと言える。それも30余年ものキャリアが成せる技であろう。使用しているギターも遍歴こそあれ、基本はアンガス→ギブソンSG、マルコム→グレッチである。
どこまで行っても金太郎飴。ワンパターンに思えるサウンドは「カッコイイことしかやっていない故の必然」と誰かが言っていたが、本当にその通りだと思う。2010年3月に来日したらしいが…行きたかった。あと10年待つか。その時にはツマラナイ音楽が駆逐され、本物だけが生き残っている、あるべき姿へと回帰していることを願う。
そうそう、AC/DCはライヴバンドで、その本領はライヴにて遺憾なく発揮される。
イギリス・ドニントンパークでのライヴの模様。こんなだだっ広い会場を満員にできるバンドは、世界広しと言えどもそうそういないであろう。ドラムは一時期加入していたクリス・スレイド。フィルより若干前のめり→ほぼジャストかな?さすがベテランスタジオドラマー。AC/DCの面々が信頼を置いていたのもうなずける。
Back in BlackのレビューというよりはAC/DCのレビューであるが…。このアルバム、夏のあっつーい日に爆音でドライブするのに最適である。他にも90年代初頭のライヴを集めた2枚組その名も「Live(AC/DCはショウバンドです)」、初代ヴォーカルであるボン・スコットの遺作となった「Highway to Hell」、最新アルバムの「Black Ice」も素敵。一家に一枚、いや何枚でも、AC/DCです。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆。
以上。
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